くもなわ



「くもなわ」は、島根県出雲市、神門通り観光案内所「おもてなしステーション」のパンフレット棚としてデザイン・制作された。出雲市民の方々を中心に、出雲に訪れた観光客の方々、学生・建築関係の方をはじめ東京や近隣地域から集まった多くの協力者の方々が参加したワークショップ形式により、制作・組み立てが行われた。

ワークショップでの組み立てを可能にする為、東京で事前にレーザーカット、プラモデルのように番号付けし、2枚一組みに貼り合わせた5.5mm合板の部品をハンマーではめ込みながら組み上げていけるようデザインした。プロではない人でも、特別な道具を使わずに小さな部品から大きな構造体をつくることができる方法を考えた。
 通りに対しては波打つパターンが上下につながって応力を伝達する構造面をつくり、室内側には違い棚のようにわずかに高さを変えた水平面を分散させ、それらを「く」の字型に折れ曲がらせた部材の連続により統合した。「く」の字の短手部材と、それらを架け渡す長手部材は、相欠きにより接合された後、さらに高さ方向に固定する為の「貫き」のようなピンにより全て固定されている。

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神門通りは出雲大社につながる参道であり、大社へお参りする参拝客をはじめ、多くの観光客でにぎわう。棚が設置された「おもてなしステーション」は、市畑電車の出雲大社駅から、出雲大社入り口に至るまでのちょうど中頃に位置する。
「おもてなしステーション」は、単にパンフレットを配布するだけの観光案内所である以上に、地域の人ならではの地元情報や、地域の日々の暮らしの中にこそある本当の出雲地方の魅力を情報発信していく、文字通りステーションとして機能することを目指しており、通りに面して主要な顔をつくるパンフレット棚も、出雲のここにしかないデザインで、地元の人たちが自分たちで組み立て、自分たちでアレンジをしていけるようなものになることが求められた。

舟の骨組みのような構造体には、水平な部分にはパンフレットを置ける一方で、特注のアクリルケースを差し込めば、3つ折サイズのパンフレットの縦置きやペン立てにも使え、ひっかけて飾りや展示物を設置することもできるようデザインされている。さらにこれから使われていく中で、より様々にアレンジされていくことを期待し、差異に満ちた多様な形状を埋め込んだ。

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「くもなわ」 /島根県出雲市、日本、2012 © 木内俊克、CitySwitch
協力: 出雲建築フォーラムの皆様、出雲市観光課、出雲神門通り蘇りの会、出雲神迎の道の会、ワークショップに参加・協力して下さった全ての皆様・東京の学生の皆様、TUSデジタルスタジオ
2013グッドデザイン賞・受賞(「神門通りおもてなしステーション」として、公共領域のための空間・建築・施設分類にて)